光を味方に付けて怖いものなし! 「露出」完全使いこなし術

2020年5月18日

【約 8 分で読める記事です】

写真の明るさ、つまり「露出」を左右する重要な要素について、
以前記事にまとめました。

もう一度おさらいしてみると

  • 絞り値(F値)
  • シャッタースピード
  • 感度

はい、この3つでしたね。
これらの関係を知っているのと知らないとでは
写真の撮りやすさが全然変わりますので、頑張って覚えましょう。

しかし、これを知らなければ写真を撮れない訳でもない。
なぜかといえば、撮影者が考えなくてもカメラが勝手にやってくれるからです。
今のカメラは全自動のモードがあるので、何の知識もなくても失敗しないんです。

スマホで写真撮るときに「絞りが……」とか「シャッタースピードが……」とか気にしないでしょ?

ということで、今回はカメラの露出モードの話を中心に、
「露出」についての話の続きをやっていきたいと思います。

露出モードを使い分けよう

カメラによってダイヤルだったり、メニュー画面の切り替えだったりで
「P」とか「Av」とかの表示を見たことがあるかも知れません。

手持ちのカメラのモードダイヤル部分を集めてみました。
では、それぞれの使い分けについて見てみましょう。

マニュアル(M)

絞り:手動
シャッタースピード:手動
感度:手動

名前の通り、全てを手動(マニュアル)で設定するモード。
前回の記事の内容はこのMモードを前提で書いています。
設定を間違えると露出が適正にならず撮影失敗になってしまう。
そんな事情もあって主に中級者以上しか使いませんね。
古いフィルムカメラではモード以前に全部手動で設定するしかないものも多数。
あとは外付けのストロボ(フラッシュ)を使う時もMモードを使います。

プログラムオート(P)

絞り:自動
シャッタースピード:自動
感度:手動

感度だけ決めればあとはカメラがよろしくやってくれるお手軽モード。
露出を外さないようになるので、ピントと構図だけに集中して
バシバシ撮影していくことが出来ます。

また、プログラムシフトといって、露出を一定に保ったまま
絞りとシャッタースピードの組み合わせをダイヤルで変えられるものが殆どです。

例えば、F8と1/125の組み合わせをF5.6と1/250F11と1/60に変えるという具合。

だから自動ではじき出されたF値やシャッタースピードを変えたいときも
ファインダーを覗いたまま指一本で操作が可能です。便利ですねぇ。

シャッタースピード優先オート(S/Tv)

絞り:自動
シャッタースピード:手動
感度:手動

感度とシャッタースピードを自分で設定すると、適正な絞りを決めてくれるモード。
Pと似ていますが、明確にシャッタースピードを固定しておきたいときに便利です。

望遠レンズで撮っていて手ブレするのが心配だからシャッタースピードを速めに固定しておこう、とかね。
または、動きを止めたいか動感を出したいかでシャッタースピードを調整することもあります。

カメラのメーカーによって「S」と表記しているところと「Tv」と表記しているところがあります。
SはShutterspeed、TvはTime valueの略らしいです。

絞り優先オート(A/Av)

絞り:手動
シャッタースピード:自動
感度:手動

シャッタースピード優先と対になるモードですね。
こちらは絞りを設定すると適正なシャッタースピードを自動で選んでくれます。
絞りの調整……すなわちボケの量の調整です。
背景を大きくぼかしたい、あるいはぼかしたくないという意図で
絞り値を固定しておくことができます。
他と比べて、結構このモードを使っている人は多い印象。あくまで印象だけど。

こちらもメーカーによってAだったりAvだったり表記が少し違います。
AはAperture(絞り)の略です。AvはAperture valueですね。

いずれのモードでも感度だけは必ず手動で設定するようになっていますが、
これはフィルムカメラ時代の名残です。
フィルムは使う感度が決まっているので一枚ごとにバラバラでは困るわけで
そのため感度だけは必ず手動(だったの)です。

オートは万能じゃない

デジタルカメラでは感度も自由に動かせるので、
上に紹介した3つの自動露出モードの他にも、
機種によってはTAvモード(シャッター・絞り優先オート)とか
Svモード(感度優先オート)などの機能が付いているものもあります。

しかしいずれのモードにしても、「これさえ使っておけば大丈夫~!」
みたいな万能なものではありません。
どの数値を固定したいのか、あるいはカメラに決めて欲しいのかは、
状況によって変わりますので、必要に応じてモードを切り替えて使いましょう。

強いて言うならMモードは万能だよ。

自動露出の基準:18%グレーとは

ところで、Mモード以外にダイヤルを合わせるとカメラが自動で適正露出に合わせてくれますが、
一体何を基準にして「適正」を計っているのでしょうか?

それが18%グレーです。

カメラに内蔵されている露出計(TTL:Through The Lens露出計)は、
名前の通り、レンズを通ってきた光の量を計っています。つまり被写体に反射した光の量です。
ところが、ものに反射する光の量は色や材質によってバラバラ。
例えば白い紙は光をよく反射しますが、黒い紙はほとんど吸収してしまいます。
そこで基準として使われるのが反射率18%のグレーなんです。
どんなものでも反射率が18%として、カメラは明るさを調整しているんですね。

プロカメラマンが正確に露出を計るときは、こういう「グレーカード」を使います。
18%っていう割に見た目は結構濃いですよね。

なぜ18%なのか。
風景写真で画面内の平均をとると大体18%だから、とか
人の肌の反射率がそれくらいだから、とか諸説あるようですが、
とりあえず18%で合わせておくといい感じに撮れるようになっています。

「いい感じ」じゃなかったら露出補正

しかしながらこの「いい感じ」はあくまでもカメラが自動計算したいい感じなので、
場合によって自分の思っている通りにならないこともあります。

例えば、冬山に出かけてキラキラ輝く一面の銀世界が綺麗だったので、
「うわぁすげー!」とその風景を写真に撮ろうと思うと・・・・・・
日の光を受けて真っ白に輝く雪をカメラが「これは明るすぎだな」と判断して
曇り空の下のようなどんより暗い画にしようとします。

逆に、真っ黒のものを撮ろうとすれば「暗すぎだな」と判断して
いまいち黒が締まらない白茶けた画を撮ろうとします。

そういう時は思った通りの画になるようにカメラに指示を出します。
喋りかける訳ではありません。露出補正という操作をします。
もうちょっと明るくして、というときは露出補正ダイヤルをプラス方向へ
暗くしてというときはマイナス方向へ動かします。
すると、あなたの意向を汲んで
カメラがバッチリ思った通りに画を収めてくれるようになります!

ちょっとくらい外してもいいじゃない?!

ところでここまで「露出をきちんと合わせる」ことについて書いてきましたが、
適正露出から少しでもズレたら失敗、というほど設定がシビアな状況はそうそうないはず。
露出設定に手間取ってシャッターチャンスを逃すほうがよっぽど勿体ない。

というか、露出設定がそんなに厳密なものだったら「写ルンです」なんて使いものになりません・・・・・・。

あまりに大きく外して「白飛び」「黒つぶれ」が出るようでは困りますが、
露出設定にはこれくらいまでなら外しても何とかなるやろ、という限度があります。
それをダイナミックレンジとか、露光寛容度(ろこうかんようど)と呼びます。
フィルムカメラの時代にはラティチュードとも呼ばれていました。

ダイナミックレンジは「カメラが表現できる真っ黒から真っ白までの幅」のことですので、
その幅の中に収まるように露出設定をしておけば、多少ズレても大丈夫なんです。
ただ、多少と言われてもどれくらいかピンとこないと思いますので、
実際に撮影してみて、どれくらいまでがOKなのか、どこからアウトなのか
そのあたりの感覚は各自掴んでもらうしかないところです・・・・・・練習あるのみ。

サニー16ルール

露出設定について「こんな適当でもいいのか」と思える話をひとつ。
細かい露出設定ができないトイカメラでの撮影を愛好する人がよくやっている
「サニー16ルール」という考え方があります。

ルールは至って簡単。

  • まず、感度とシャッタースピードを決める。
    • 感度はISO100~400が一般的です。
    • 設定した感度と同じくらいの数値をシャッタースピードにも設定します。
      ISO100ならシャッタースピードは1/100とか1/125くらい、
      ISO400なら1/400か1/500です。
    • この2つは基本的に固定したままにします。
  • 明るさに応じて絞り数値を調整しながら撮影します。
    • 快晴(影がくっきりと見える)のときは、F16
    • 晴れ(ふわっとした影が見える)のときは、F11
    • 薄曇り(影がほとんど出ない)のときは、F8
    • 曇りまたは日陰のときは、F5.6

細かく測る必要もなく、動かすのは絞りだけなのであまり難しくないはず。
そうやって撮ってみると、まあ大外しはないんですね。
ぜひ一度試してみてください。
この撮り方を極めると、適正露出の設定が露出計に頼らずに掴めるようになってきます。

まとめ

  • カメラの露出モード(P/A/S/M)は状況によって使い分ける
  • 18%グレーの自動露出が思い通りにならないときは露出補正を使う
  • ダイナミックレンジから外れない範囲で「ある程度」適当でOK
  • サニー16ルールで脳内露出計の精度を上げていくと役に立つ

2回に分けて露出の話をしてきましたが、
是非ご自分のカメラをいじりながら実践してみてください。
実際に撮影してみるのが一番分かりやすいと思います!

それでは、かしまさでした。