【How to FILM】「長巻フィルム」って知ってる? お得にフィルム撮影を楽しもう!
【約 17 分で読める記事です】
「お徳用」って、良い響きですよね。
フィルムにも「お徳用パック」と称して
何本かパックになっている物がありますが、
(最近はあんまり見なくなりましたかね……)
実はお徳用よりももっとお得な
「長巻フィルム」というのが存在します。
今回はその長巻フィルムについて紹介していきます。
長巻フィルムとは
普通の35mmフィルム(135フォーマット)では、
パトローネと呼ばれる専用の入れ物に36コマ分
(24コマ分)のフィルムが巻き取られています。
これに対して、パトローネなしで
中身のフィルムだけのものを長巻フィルムといいます。
「長巻」の他、「長尺」「100ft巻」「バルク」などとも呼ばれます。
名前の通り100フィート(約30m)のながーいフィルムが
箱(または缶)の中に入っています。
その100フィートから撮影に使う分を切り出して、
自分でパトローネに詰め替えて使います。
早い話が詰め替え用フィルムということですね。
長巻フィルムの利点・欠点
そんな長巻フィルムですが、普通のフィルムに比べて
どんなメリットやデメリットがあるでしょうか?
コスパがいい
ほとんどの人がコスパを上げようとして導入する。
たとえばこのIlford HP5+の36枚撮り、
1本で880円(2021/08/09時点でのヨドバシカメラ価格)です。
で、その長巻フィルム版がこちら。
100ftで14,990円(同上)です。
単価だけで見るとものすごく高いように見えますけど、
100ftからだいたい36枚撮り20本分を切り出せるので、
1本あたり20/14,990≒750円となり、
パトローネ入りよりも多少安くなるんです。
しかし安くなっているとはいえ、日本での販売価格はかなり高いです。
本格的に使うようになったら、海外サイトから個人輸入すると
さらに半額近くまで安く買えることもあるので、調べてみてください!
枚数を決められる
中古で買ったカメラの動作テストをしたいだけの時など、
普通のフィルムだと持て余してどうでもいいものを撮影しがち。
その点、長巻フィルムは自分で好きな分だけ巻き取れるので、
好きな長さので作れます。
例えば「10枚撮り」のフィルムを作って
カメラのテストをしたり、現像の実験をしてみたり、
あるいは36枚撮りだといつも微妙に余るんだよねぇ、という人は
30枚撮りにカスタムしたり、自由自在なんです。
しかし良いこと尽くめでもなくて、もちろん欠点もあるわけで。
諸々用意するものがある
コスパは下げられるけど初期投資が必要。
パトローネなしなので、
いきなり長巻フィルムだけを買ってしまうとカメラに入れられません。
パトローネは別に調達してくる必要がある。
こういう専用品も売られていますが、
使用済みパトローネを再利用すれば買わなくて済みます。
自家現像する時、捨てないでとっておきましょう。
モノクロしかない
ここまで読んできて薄々気づいていた方もいらっしゃるかと思いますが、
100ftが販売されているのはほぼモノクロフィルムだけです。
カラーで撮影したい人はパトローネ入りのフィルムを買ってください。
カラーフィルム派でコスパを上げたい人には「ハーフサイズカメラ」などをおすすめします。
いろいろ試すには不向き
100ftで36枚撮りフィルム約20本分と先に書いていますが、
つまり20本単位でフィルムをまとめ買いしているのと同じこと。
お試しで使ったり、いろんなフィルムを使い分けたい時は
ちょっと使いにくいかもしれません。
自己責任
手作りフィルムなので、何か不具合が起こったり、
ちゃんと撮影できていなかったとしても、
クレームを入れる先がありません。ぜんぶ自分のせい。
お店に現像を頼もうとしても断られることがある。
いろんなことが起きても動じない心が必要。
良い機会なので自家現像もできるようになっちゃいましょう。
モノクロフィルムの自家現像については既に記事を書いていますので、
宜しければそちらもあわせてお読みください。
使えないカメラがある
昔ながらのフルマニュアルカメラなら問題ないですが、
感度が自動設定されたり、フィルムが自動巻き取りの
「そこそこ現代的な」カメラでは不具合が起きるかも知れません。
正しい感度が設定されないとか、フィルムを巻き取ってくれない、ジャムる、など。
感度についてはDXコードというバーコードが付いているパトローネを使えば
回避することもできますが、ちょっとめんどくさいよね。
最後のコマがカブる
カメラに装填する時に感光するので、
フィルムの先端部分は写真が撮れませんが、
長巻フィルムでは軸を取り付ける時に最後端も感光するので、
最後に撮った写真が撮れてないということが高確率で起こる。
フィルムカウンターが30を過ぎたら決定的瞬間を狙わない方が良いかも知れません。
……ま、そんな感じのフィルムです。
なんだか欠点の方ばかりを論ってしまったように見えますが、
たくさん使いたい人、特に古いカメラを使っている人にはおすすめですよ。
長巻フィルムを使うための道具
実際に長巻フィルムを使うにあたって、最初に用意した方がいいものはこちら!
- フィルムローダー
- ダークバッグ
- 長巻フィルム
- 空のパトローネ
- ビニールテープ
- はさみ
フィルムローダーはLPLの「デイロール」というのが国内だとポピュラーです。
が、
3万くらいします。
英語を使って個人輸入が苦ではない人はこちらをおすすめします。
https://www.bhphotovideo.com/c/product/1313619-REG/legacy_pro_63000_lloyd_35mm_bulk_film.html
B&H Photoっていうアメリカのヨドバシみたいなサイトで購入。
2022/05/22時点で52.49ドルでしたので、7,000円くらいかな。
フィルムローダーの準備
実際にフィルムに巻き取る前に、長巻フィルムをローダーにセットします。
ローダーの説明書に書いてあるとおりに進めていけば良いのですが、
大きな蓋を回して本体を開けて、
箱から取り出したフィルムのロールを収めます。
中心に棒が出ているので、そこにフィルムを巻いている
「芯」を差し込みます。
そして最外周のフィルムを外に出る隙間のところに差し込んで
しっかりと蓋を元通り閉めます。
この作業は全てダークバッグで行う必要があります。
フィルムの箱を開けるのもダークバッグの中でやりましょう。
フィルムを巻き取る手順
kashimasaが使っている詰め替え用パトローネです。
普通のパトローネと同じに見えますが、
ちょっと力を加えるとこんな風に簡単にばらけます。
落とした衝撃で開く危険性もあるので取扱注意。諸刃の剣。
それでは実際の使い方です。
上に付いている小さい蓋を開けるとフィルムがちょこんと出ているので、
ここにパトローネの軸をテープで留めます。
長めにテープを使ってしっかり留めましょう。
巻き上げ動作でフィルムが軸から外れてしまうと
ダークバッグにカメラを入れてフィルムを回収することになります。
フィルムの巻き上げ時には結構な力がかかります。
手で引っ張って裂けるようなセロハンテープ、紙テープではなく
ビニールテープが安全です。
それと、軸の「出っ張りがある方」の向きに注意しましょう。
この向きの時に「右側」が出っ張っているのが正しい向きです。
逆にしてしまうと、カメラに入れられません……
パトローネの本体を被せて、蓋を装着します。
後から取れたりしないように、
「パチン」となるまで押し込んで下さい。
小さくて作業しにくいですが、この作業の時に
あまりフィルムを引き出しすぎてしまうと、
カブって写らない範囲がどんどん長くなります。
できるだけ引っ張らないようにしながら作業してください。
蓋が装着できたら出っ張りを軽く回して、
テープの部分を軽くパトローネ内に巻き込んでおくと良いかも。
(時々、テープが引っかかって巻き取れないことがあるので)
ここまでできたら蓋を閉めて、巻き取り用のハンドルを差し込みます。
確実に奥まで差し込まないと巻き取れませんので注意。
軽く左右に回しながら「ザクッ」と入るポイントまで入れます。
もし蓋がちゃんと閉まらない場合は、
パトローネの取り付け方が何かおかしいはず。
ハンドルを何回転すると何枚撮りになるかの目安が書いてあるので
好きな枚数分だけハンドルを回します。36枚撮りなら30回転ですね。
巻き取り終わったらハンドルを外して再び蓋を開けます。
そしてフィルムを切って、巻き取り完了。
しつこいようですが長く引き出すと使えない部分が増えます。
切っただけのフィルムは最初から最後まで幅が同じで、
カメラに装填する時のリーダー部分がないので……
はさみで切って細い部分を作ります。
市販品のように綺麗に切ってもいいですが、
ぶっちゃけこんなふうに斜めに切るだけでも使えます。細けりゃいいの。
切れ端は現像薬品のテストなどに使えますので、
捨てずに集めておくと役に立つかもしれない。
必ずフィルムケースに入れて持ち運び・保管しましょう。
落として開いちゃうこともなくなりますし、
繰り返し使っていることでフィルムの出入り口のフェルトが
段々劣化して、光漏れしやすくなりますので。
Ilfordとかの黒いフィルムケースがおすすめ。
同じフィルムしか使わないならともかく、
様々な種類のフィルムを巻き取るような使い方をするなら、
ラベルを付けて分からなくならないようにしましょう。
というわけで、今回は「長巻フィルム」の紹介でした。
モノクロフィルムを継続的に消費する人には是非おすすめしたい。
常用フィルムが決まっているのなら特に。
それでは、かしまさでした。
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